AI技術が急速に進化し、その活用範囲が拡大しています。しかし、その一方で、AIが制作した作品に関する著作権や法律に関する疑問が浮上し問題となっているのです。
現在の日本の著作権法ではどのようにAI制作物が扱われているのでしょうか。この記事では、AI制作物の著作物性や著作権法上の落とし穴について解説します。
AI制作物と著作権法
近年、AI技術の発展によってさまざまな分野で革新が見られるようになりましたが、その一方で著作権法に関する新たな問題もでてきました。
特に、AIが制作した作品の著作権については、法的な整備が追いついていないため、法律の落とし穴が多く存在します。2023年4月27日、イラスト画家たち(イラストレーターらでつくる団体)により法規制を訴えるというニュース(※1)も出ているほどです。
正直この問題は私たちが考えている以上に深刻で早急に解決しなければいけない内容なのかもしれません。
著作権法の基本概念
日本の著作権法では、著作物は「思想または感情の創作的な表現」と定義されています。したがって、「思想または感情」が「創作的に表現」されているものが著作物です。
この創作的な表現は、独創性があり、他人によって容易に模倣できないものでなければなりません。
しかし、現行の著作権法は、主に人が制作した作品を対象としており、AIが制作した作品の取り扱いに関しては明確な規定が存在しません。このため、AI制作物の著作物性や著作権の帰属については、法的な議論が必要とされています。
私は指示されて作ったに過ぎないですよ。
元のデータはどこから貰ってるの?
・・・
AI制作物の著作物性
AIが自律的・自動的に作った作品は、「思想または感情」の要件を満たさないため、著作物とは認められず、著作権も発生しないとされています。しかし、AIが生成した作品に人が一定程度の創作性を加えることで、著作物としての扱いが変わる可能性があります。
例えば、AIが生成したイラストや文章に対して、人が独自の解釈や感性を加え、新たな価値を創出する場合、その作品は著作物として認められる可能性があるということです。
しかし、人がどの程度の創作性を加えることが必要であるか、また、その基準をどのように設定すべきかは、今後の課題になります。
さらに、AIが人間の著作物を参考にして作成した場合、指示をしていなくても元となる著作物の著作権を侵害していないかという問題も発生します。この点に関しても、適切な基準やルールが整備されることが求められているのです。
「ChatGPTの指示文テンプレート ⑤【小説・脚本・歌詞】アート編」の記事にも書いている通りAIはプロンプト(指示)に従って制作します。この指示の使い方をしっかりと学ぶ必要があるのかもしれません。
AI制作物の著作権問題
AI制作物は従来の著作物とは異なる性質を持ち、現行の著作権法では対応が難しい状況が続いています。この問題に対処するため、さまざまな取り組みが行われていますが、その背後には著作者やアーティストの権利保護の観点があるのです。
著作権侵害の事例
例えば、画像生成AIが著作権保護されたイラストやデザインを参考に、類似した新しい画像を生成したとします。このような場合、オリジナルの著作物の著作者は、自分の著作物が無断で使用されていると感じるのではないでしょうか。
「似ているだけでAIが作ってるから盗用していない」
といわれてもほとんどの人は納得しないでしょう。私もこの意見に関しては同意見です。
盗用していないとしてもAIはあらゆる情報をもとに成長しているため、知らず知らずのうちに著作権の侵害をするという懸念がるのです。
また、音楽や文学作品においても、AIが既存の著作物を学習して新しい作品を生成することがあります。これらの作品が著作権侵害にあたるかどうかは、現行の著作権法では明確に定められていませんが、著作者やアーティストの権利保護が求められる状況です。
私は‥‥盗用していない。
でも、知らず知らずのうちに参考にしているんじゃないの?
対策ソフトの開発
こうした世論の流れから著作権侵害を防ぐための対策ソフトが開発も進んでいます。
シカゴ大学のベン・ジャオ教授が率いる研究チームは、AIが無断で著作物を学習することを防ぐソフトウェアを開発(※2)。
Glaze(グレイズ)プロジェクトは、著作物に特定のデータを埋め込むことで、AIがそれを学習しようとすると、自動的に識別してブロックするとのこと。
このような対策ソフトの開発は、著作者やアーティストの権利保護に貢献するだけでなく、AI開発者にも無断で著作物を学習しないような開発方針を考慮するきっかけになるのではないでしょうか。
法律の落とし穴と対策
現行の著作権法では、AI制作物に関する明確な規定がなく、法律の落とし穴が懸念されています。この問題を解決するためには、法律の見直しやアーティスト保護の取り組みが必要です。
法律の見直し
AIが生成した作品の著作権問題に対応するため、法律の見直しや関連法規の整備が求められます。
具体的には、AI制作物の著作物性や著作権侵害に関する規定を明確化し、アーティストや著作者の権利保護を徹底しなければいけないということです。
「ChatGPTとは:使い方、始め方、日本語対応機能を徹底解説!」の記事でも書きましたが、岸田総理とChat GPTの開発をしているOpenAIのCEOが、個人データ保護について「政府に協力する」と表明しています。
今後この著作権問題に対しての対策の動きが活発になってくるでしょう。
また、法改正だけではなく、企業や開発者に対する指針の提供や、著作権保護に関する国際的な取り組みも重要です。国際協力によるルール作りや枠組み整備が進められることで、AI技術の発展と著作権保護のバランスが取れた環境が整うことが必要だといわれています。
すぐには難しい著作権保護の問題
ただこの問題はすぐに解決できるものではありません。AIの干渉を制限することはAIの成長を止めることにも繋がるからです。
どこまでが著作権の保護対象かわからないよ。
難しい問題だ‥‥
だからこそ、著作権法におけるAI制作物の扱いに関する明確なルールが整備されるまで、アーティストは自己防衛策を取ることが重要です。
保護をしつつ成長していく、このバランスを保ちながらAIを活用できるように私たち利用者が考えて判断することが必要ではないでしょうか。とりあえずAIが作ったものをそのまま世に出す。のではなく、著作権法に触れていないのかを調べて問題がないのかを判断する行動が必要です。
AI技術の発展と著作権保護の将来
AIの進化に人が作る法律が追いつくのか‥‥
ここからは、どうすればAIと著作権の共存ができるのかについて解説します。
AIと著作権の共存
著作権保護が適切に行われる未来を目指すためには、各国と利用者、著作権元が協力して新たなルールや法律を整備していくことが重要です。
どこまでが著作権に違反しているのか、どこまでが問題ないのかをAIを利用する人が知る必要があります。
どこまでが大丈夫か教えてよ
今から話し合うからちょっと待って
特に音楽やイラストは文章に比べ判断がしやすく、目立つため慎重な判断が求められるでしょう。
ブログの世界ではコピーコンテンツを行なった場合、Googleの判断で上位表示させないという対策ができるため利用者も意識して対策しますがイラストや音楽はそうはいきません。判断するためにはそれなりの知識や行動が伴うのです。
なるほど。コピーコンテンツを判断するツールが出て来ればそれなりに対策はできそうだね
AI利用者のモラル向上と情報発信
どこまでが著作権違反なのかを著作権元は発信することで、利用者のモラルが向上すると私は感じています。
小さい子どもはスーパーに並んでいるお菓子を勝手にカゴに入れたり、レジを済ませずに持って帰ろうとしたりします。
善悪がついていない状態だね。
その度に、周囲の大人が「これはダメだよ」と教えて子どもは学んでいくのです。
AIを利用する私たちは、まだ子どもと同じようにAIを利用しているのかもしれません。
無意識に犯してはいけないボーダーラインを超えてしまう。そんなことが起きないようモラルを持ち秩序ある行動が必要なのではないでしょうか。
AIメディアでは、最新のAI情報をまとめ、わかりやすく解説していますのでぜひ参考にしてください。
まとめ
AI技術の進展により、著作権法における新たな課題が浮上しています。日本の法律では、現状、AI制作物は著作物とは認められず、著作権も発生しないとされていますが、今後の法律の見直しや国際的な取り組みが重要です。
アーティストや開発者、利用者が協力し、適切なルール作りや教育が進められることで、AI技術と著作権保護の共存が可能になると信じています。
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